祇園の暴走事故、てんかんではなく高次脳機能障害
この事故では、車を運転していた男性(事故で亡くなっています)にてんかんの持病があったために、まずは「てんかん」が原因であると言われました。
これは、この事故の少し前に起きた、てんかん発作を持つトラクターの運転手による死亡事故が大きな話題になっていたためと思われます。
たまたまなのか、今までは見過ごされてきただけなのかはわかりませんが、この時期、てんかんを持つ人の事故が複数報道され「てんかん」が必要以上に悪者にされていました。
(この頃には、子供の集団登校の列に車が突っ込むという同じような事故も連日報じられていました。想像するに、同様の事故が急に増えたわけではなく、毎日のように起きている本来ならば報道されない多くの交通事故の中から、特定の事故が注目された結果として、似たような事件をマスコミが取り上げるようになったためであると思われます。)
また後日の報道では、事故を起こした藤崎容疑者が、事故時には間違いなくハンドルを操作していたと言う目撃証言があり、「事故は故意による犯行であると考えられる」というものもありました。
しかし今回京都府警では、複数の専門家に検証を依頼した結果、事故を起こした藤崎容疑者が、過去のバイクの事故で脳に障害を受け、てんかんや高次脳機能障害を発症。
暴走事故時は高次脳障害による混乱で、パニックに陥っていた可能性が高いとの見方を発表しました。
私のような門外漢でさえ、この事故の直後から、「事故を起こした男性が高次脳機能障害を持っていて、それが原因で事故に繋がったと思う」と患者さんに話していたくらいですから、脳障害の専門家は、この事故が高次脳機能障害によって引き起こされた可能性が高いことはわかっていたものと思われます。
私はこの記事を読んで、藤崎容疑者にとっても、ご遺族の方にとっても、事故の真相が誤解されたままで終わらなくて本当に良かったと思いました。
故意による犯行として処理されていたら、本当にやりきれません。(とはいえ、本人は亡くなっているので、真実はわかりませんが)
ポイントは、彼のてんかんが過去のバイク事故の影響で始まっていることです。
てんかんを惹き起こすような脳損傷があったのであれば、高次脳機能障害の診断が下っていなくても、問題が残っていた可能性は大です。
高次脳機能障害は、文字通り高次の脳が故障したもので、個人個人で現れる症状が異なり、周囲の人間には良くわからない症状です。
普通に知的な会話も出来るのに記憶が怪しかったり、判断力がなかったり、時計を読むことが出来なかったりと、ちょっと不思議な症状を呈していて、その点では学習障害と似ているかもしれませんね。
身体の麻痺などとは違い、障害が外からは見え難く、本人も自分の症状を上手に把握することが出来ません。
薬を飲めば治ると言ったものではなく、リハビリでの回復にも限界があります。
大切なのは、本人や周囲の人間がその病態を理解し、その障害と上手く折り合いをつけて、共に生きていくテクニックを磨くことなのだろうと思います。
このような事故を起こさないためには、本人が自分の困った症状を隠すことなく、周囲の理解を得ることが必要不可欠です。
これは発達障害の人にも言えることです。自分の問題を隠さず、周囲の人達と共有することで問題を解決していくことが大切です。
0コメント