発達障害との付き合い方 子供編 その1.褒める
まず、ご自分のお子さんが「なんかおかしい?」と感じたら、なるべく早い時期に対応することです。
もちろん遅くても間に合いますが、脳の回路の形成や、子供の自尊心を守る意味でも、早い時期に対策を立てる方がリスクが少ないことは事実でしょう。
一番大切なことは、「読み書きが出来るようになる」ことや、「他者と理想的な人間関係を築く」ことや、「人との競争に勝つ」とこや「子供(や親)が社会的に評価される」ことではなく、その子が自分らしさを発揮し、「のびのびと人生を楽しむこと」だと思います。
人と同じように出来ることを求めたら上手くいかないかも知れませんが、自分らしさを求めれば、人生は成功するはずです。
親の側も、子供の将来を考えたら不安になるでしょうし、子供同様に自分が犠牲者だと感じたり、自分の努力が実を結ばなかったりで、子供を思うあまり子供に当たってしまうこともあると思います。
子供と喧嘩になることもあるでしょうし、言い過ぎて自己嫌悪になることもあるかも知れません。 それは当たり前で、仕方のないことですから、反省はしても自分を責めるのは止めましょう。
発達障害の子供全般に言えることですが、目に見える障害の他に、
・不器用さ。(脳と運動の連携が悪い)
・記憶障害。(今聴いたことも覚えられない。約束や宿題などを忘れる)
・自分の考えていることを適切な言葉で表現できない(言いたいことと全く別の言葉を言ってしまうこともある)
・言葉で表現できないことを態度で表現してしまう。(暴れたからと言って、特別暴力的な子供だというわけではありません)
・上手くいかないできないことがあまりにも多いのでイライラして怒りをため込みやすい。
・興味の対象が狭い。
・自分が上手くできないことを隠すために強がる、あるいは無関心を装う。
などの特徴が現れることが多く、それが様々な誤解の元になりがちです。
これらのことは、わざとでも、努力が足りないのでも、我慢が足りないのでもありません。
親が子供に対してイライラしてしまうこと以上に、彼らにとっては、どうしようもない、仕方ないことなのです。
学習障害の子供が読み書きを学ぶのは、脳卒中で片麻痺になった人が歩く練習をするようなものです。適切なリハビリが行われなければ歩けるようにはならないし、歩けるようになっても、麻痺のない人と同じように歩くことは困難です。
子供は、学校や塾やお店などで恥をかかないだろうかとか、人から変に思われないだろうかとかと緊張し、家庭でも親に怒られるんじゃないか、親を悲しませるんじゃないかと不安になり、苦手なことばかりやらされてストレスを溜めています。
子供がどんな風に感じているのかを自分で表現してくれることは少ないので、親は子供をじっくり観察し、自分のやらせたいことを押しつけることはなるべくしないように気を付ける必要があります。
それが子供にとってどれほど苦痛なことか、想像する習慣を付けましょう。
自閉症の子供は、見知らぬ人に会うことはひどいストレスかも知れませんし、読み書き障害の子供にとっては読むことや書くことは恐怖ですらあるかも知れませんし、注意欠陥多動性障害の子にとってはじっとしたまま話を聞くのは椅子に縛り付けられている程の苦痛かも知れません。
発達障害の子供は、自分の気持ちを誰もわかってくれないと感じている可能性が高いので、せめて親だけでも、彼らの気持ちを理解してあげたいものです。
子供が自分の気持ちを親に伝えるためには、親は自分の見方で、何を言っても大丈夫と安心させてあげる必要があります。
子供の気持ちを知りたい、表現させたいと思うときは、焦らず、否定せず、プレッシャーをかけず、じっくり時間を掛けて聞いてあげましょう。
甘やかすことと、きちんと聴くことは違います。きちんと聴いて、自分の意見を押しつけず、子供が納得できるようきちんと話しましょう。まず相手の気持ちを認めてから説明するのがコツです。
子供に何かを覚えさせたいときは、(実は大人も同じですが)子供の興味があることを探しましょう。
上手く字が読めない子供に、こちらが用意したテキストを押しつけるのはなるべく止めて、鉄道が好きなら、鉄道に関する本やおもちゃ、車でも恐竜でもマンガでも良いので、本人が好きなものから入って、その範囲を広げるように工夫することです。具体例を挙げると、・鉄道模型で手の感覚を育てる。
・図鑑で絵と文字を結び合わせ、声に出して読むことで(読んであげましょう)、文字と音の関係を覚える。
・路線図で地名を覚える。
・時刻表で時間の感覚を身につける。
・料金表でお金の単位や考え方を学習する。
・自分で電車や路線図を描いて、視覚と手の運動機能を連動させる。
・鉄道に関する本を読み始める。
こんな風に興味のあることから広げていけば、いくつもの連動する事象を学習できる可能性があります。
好きなことに対する集中力は高いので、こちらが強制しなくても、もっと学びたいと思わせることを見つけられればしめたものです。
もしかしたら、食事もしないで好きなことに熱中してしまうかも知れません。宿題もやらずに、遊んでしまうかも知れません。
私は子供がいないので勝手なことを言うのですが、たぶん世の天才達は、それを親が許したから天才たり得たんじゃないかと思うんです。世の中で何か大きな事を成し遂げるような人は、多くの場合、普通の人が考えるしなければならないことを押しのけて、自分がすべきことをしてきたはずです。
好きなことに興じて学校に行かないのは困りますが、やらなきゃいけないと信じていることの多くは、実はやらなくても何とかなることなので、時には義務の一部をあきらめて、彼らのやるべきことを優先させるのも良いかもしれません。
そして、出来ないことが多い子には、出来ないことを反復してやらせる前に、出来ることを反復してやらせて自分にも出来るという気持ちを植え付けましょう。
褒められることが少ない子は、褒めてもらうと凄く安心するし、もっと褒められたいと思うはずです。小さなことでもなるべく褒めましょう。
褒めることがないという親御さんもいるかも知れませんが、そんなことはありません。
私が老人病院に勤めていたとき、私が大好きで尊敬していた98歳のお婆ちゃんは、(ありがとよーの人です。前記事参照)大声で人を呼んでから、誰かが「お婆ちゃんなあに?」と顔を出すと、大抵「お前は良い子だね」と言ってほっぺを撫でてくれました。
お婆ちゃんに対して、良い子呼ばわりされることを何もしていませんでしたが、(お婆ちゃんは個人を認識していません)みんなお婆ちゃんにそうされるのが嬉しくて、用もないのに呼ぶお婆ちゃんの声に、飛んでいっては車いすの前にしゃがんで笑顔を交わしていました。
人は褒めることがなくても褒めることが出来ます。それは甘やかすことじゃなくて、自尊心を育てることです。
「怒られたから努力する」より、「もっと褒められたいから頑張る」とか、「好きなことだからもっと知りたい」の方がずっと楽に頑張れます。
自尊心がなくては、人は努力など出来ません。褒めて自尊心を伸ばしましょう。
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