つらい理由
前回の続きを書きたくなりました。
人は誰でも自分の身体がつらくなると、その原因を知ろうとします。
自分の病名はなんなのか。何が原因で、どこに行けば治してくれるのか。
これだけ医学が進歩しているのだから、原因がわからないなんてはずはない。治せないはずもない。
ネットやテレビや雑誌には、最先端の医学情報や、あらゆる治療法、どんな難病も治してしまう名医や名治療家が紹介されています。
良い医者を見つけること、最良の治療を行なうことが、問題解決への唯一の道。そんな風に感じている人も多いのではないでしょうか。
病気によっては、それは事実です。自分の身体に明らかな異常を感じた場合、医者に行き、一通りの検査をして、原因がわかれば相応しい治療を受けましょう。
でも、どれだけ調べても原因がはっきりしなかったり、MRIを撮っても異常がない腰痛などの場合は、治してくれる人を探すより、自分の生活を見直すことに、パワーを注ぐことをお勧めします。
以前にも少し触れましたが、身体がつらい原因は、いくつかの要素で構成されています。
10の要素でつらくなるとすれば、身体的な原因は5で、精神的な緊張が残りの5を占めているのかもしれません。
職場や家では、肩こりや腰痛がひどくても、エコノミーの飛行機に8時間乗ってハワイに着いた途端、身体がつらかったことなど忘れてしまう。そんな症状は身体的な問題よりも、ストレスが占める割合の方が高いのかもしれませんし、ヘルニアが確実に神経を圧迫して起こした症状であれば、ハワイに着いても症状は残ります。こんな場合は身体的な問題が、苦痛の大半を占めていると考えるべきです。
逆に、身体的な問題が、精神的な部分に悪影響を及ぼすこともあります。
患者さんの身体が異常に緊張し、凝り固まっている。私は患者さんに言います。
私「かわいそうな背中になってますよ。これじゃあ、イライラするし、気力も出ないでしょう?」
患者「どうしてわかるんですか?そうなんです」
当然ですよね。身体が追い詰められれば、気持ちも余裕がなくなります。こんな人は、治療してあげると本当に元気になるし、イライラも減少します。
苦痛を感じていない状態のときでも、ストレスや身体状況が、常に7や8まで溜まっていたら、苦痛の発火点10まで、すぐに届いてしまいます。
つらい症状がホルモンバランスの異常など、明らかに身体的な問題に見えるようなものでさえ、楽しいことをしていれば、自然にホルモンバランスも改善され、苦痛は軽減するはずです。
身体症状だけにとらわれたり、できるわけもないストレス対策に悩むのではなく、いまの自分が対処すべき問題に目を向けてください。
病気を原因と考えるのではなく、病気になった原因に対処する。簡単に言えば「無理をしないこと」大切なのはここではないでしょうか。
私は思います。病気だけに対処して、根本的な問題に向き合わなければ、いまの病気が治っても、たぶん別の病気になるだけです。
例えば、いつも頑張り続けている人が腰痛で苦しんでいる。医者に行っても原因がわからない。治らない。そのせいでやりたいことができない。本人はどうしても治したい。
でも、もしかしたら、この腰痛こそが、本人を守るための大切な手段なのかもしれません。
もしこの人に腰痛がなければ、もっと無理をして「心」が壊れてしまったかもしれない。取り返しのつかない重病や、注意力の減少から大事故を起こすかもしれない。
身体は本人の無茶をどうしても止めたくて、どんどん声を大きくしているのかもしれないんです。そうしないと、無理を止めないから、からだとしても仕方なく、物理的に動けなくしたのかもしれない。身体は本当にいい子なんです。
ただ困るのは、時として、これが病気への依存に繋がることでしょうか。ここには二つの問題があります。
上手くいかないことを、みんな病気のせいにしてしまう人がいます。「これが治れば何でもできるのに」そんな風に感じて、自分の成功が病気によって邪魔されていると感てしまう。こうなると、治るわけには行かなくなります。
治ってしまうと、言い訳できなくなるからです。病気ではなく、自分の問題に向き合わなくてはならなくなり、困惑します。こんな状態に陥ると、病気が治ってからじゃないと、やるべきことに真剣に取り組まなくなるので、自分の人生が先延ばしになってしまいがちです。
私はこれを必ずしも悪いことだとは思いません。決定的に壊れてしまうよりは、ずっとマシですから。
最大の問題は、頑張りすぎて体が悲鳴を上げているのに、身体の不調は自分の心の弱さのせいだと自分を責めてしまう人の存在です。
こっちは依存よりも最悪です。身体は自分を救うために、無茶するなと必死で不調を訴えているのに、一段と自分を責め、追い詰める。これは絶対やめてください。お願いします、ほんとに。
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