どうやって返そうか
先日患者さんが、こんなことを言っていました。
「周囲の人たちから大きな恩を受けた。返さなければと思うとすごくプレッシャーを感じる」
私は、「その恩はその人たちに返す必要はなくて、人生の中で、自分が返せる時に、返せる相手に返せばいいですよ」とアドバイスしました。
このアドバイスは、それなりにお役に立てたようです。
私は今まで生きてきた中で、数限りない恩を受けています。
自分の親や親戚にはじまり、友人、諸先輩方、患者さん、本やテレビなどで触れた私に影響を与えた人たち。後輩や、私を攻撃した人たちでさえ、私を成長させてくれた恩人です。
私の悪いところは全て自分のせいですが、もし仮に良いところもあるとすれば、それは全て周囲のおかげだと思っています。本当ですよ。
私は老人病院で働いていた頃、患者さんに「先生、こんなことしてもらってすいません」みたいなことを言われると、よくこう答えていました。
「今まで散々人の世話をしてきたんですから、それを取り返そうと思えば、後、何十年も生きて、人に世話をかけないと足りませんよ」
今のお年寄り達は、本当に大変な時代を過ごして、私たちを豊かな時代に導いてくれました。
私が今まで受けた恩、もらったものを返そうと思えば、かなり頑張って長生きして、大活躍しないといけませんが、お返しする度にまたもらってしまうので、いつまで経ってもお返しできそうにありません。
だから、もらった相手にはとても返せないので、せめて若い人とか、自分の関わった人たちに、その一部でもお返しできたらと思います。
鍼灸の学生時代、私は成績優秀で、10歳年下のクラスメートの男どもにいつも勉強を教えていました。彼らが無事鍼灸師になれたのは私のおかげだと、お互いに思っているはず?です。
その内の一人が、卒業後何年もしてから家に来ました。彼にはすごくお世話になった人がいて、でも、大人になってからは、少し距離を置いているようでした。
まあ、彼は負けん気が強いので、たぶん相手の恩着せがましい雰囲気?にでも抵抗を感じたのでしょう。
そうは言っても、自分が恩知らずな人間のような気がするのか、罪悪感もある様子。
その時私は言いました。「私には返さなくていいよ。私はいろんな人に助けてもらったけど、彼らには全然返してないもん。私じゃとても返せないし、きっと彼らは私なんかから返してもらう必要もないし。だからお前は他の人に返せばいいよ。私はお前に返してもらう必要ないし」
かっちょいいでしょ?我ながら名言。
とは言え、実際は私が一方的に何かをしてあげたわけじゃなくて、お返しはちゃんともらってるんですよね。
彼らは、あの当時まだ二十歳になるかならないかだったけど、おっさん臭くて、かわいいとは程遠い外見だったけど、私から見たらやっぱりかわいかったわけで、もしかしたら私を利用しただけかもしれないけど、懐いてくれたらやっぱり嬉しかったし、教えることで自分の知識も整理できたし。
OL時代、何も出来ない私をいつも助けてくれてた人たちだって、もしかしたら、私に懐かれて悪い気はしてなかったかもしれないし。(まだ若かったから、少なくとも今よりはかわいかったはず?)
だって周囲のおじさんたちのこと、(今の私より若いけど)本当に大好きだったしね。
私に何かをくれた人たちは、私に返してもらう必要などない、すでに多くをもっている人たちかもしれない。だから私は、自分が少しは役に立ちそうな相手に返す。
私が沢山の人からもらったものを、何らかの形で繋げていけるといいなあと思います。
0コメント